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店を出ると、もうすっかり暗くなっていて。

手を引いて歩いたのは正解だったと思った。

先刻。

この所ずっと不機嫌だったエースの理由があんまり可愛かったせいか、

自分の誤解に弁解すんのも忘れちまってたから、家に戻ったらまず

その縺れた誤解を解こう思った。

 

 

「エース?」

 

手を引いて玄関まで歩いて、ふとエースが店からココまで

ずっと喋らなかったのに気付いて、俺は怪訝そうに後ろを振り返った。

繋いだ手を一旦離して、その手探りでポケットから鍵を取り出して鍵を開けた。

俺の呼び掛けに、答えは返って来なかったけど、別に気にしないで部屋まで

引っ張った。

 

「エース…?酔ったのか?」

 

リビングのソファに座らせて、相変わらず俯いたままのエースの顔を覗き込んで

ぺちぺちと頬を軽く叩くと、虚ろな目と視線が絡んだ。

 

「……馬鹿シャン…あんなキツいの…飲ませんな…」

 

「……ッぶは!悪ぃ悪ぃ!んな怒んなって」

 

開口一発目の悪態に吹き出し、拗ねたようなエースの頭を撫でた。

 

「じゃあもう寝るか?運んでってやっか?」

 

薄く汗ばんだ額に貼り付いた前髪を柔らかく撫でながら言うと、

エースは子供染みた仕草で首を振った。

 

「ここでイイ…寝る…」

 

「そか?」

 

珍しく大人しいエースに、やっぱりあの酒はまだ早かったか、と小さく笑って

毛布を掛けてやろうと寝室に行く事を告げた。

 

……………ら?

 

ぐい、と俺のシャツの裾を握って、エースが見上げてきた。

酒に濡れた目が…これは……何…?え、ちょっと…

 

「……ん…」

 

 

 

引き寄せられて、下から噛み付くような口付けに、一瞬見開いた目に映るのは

目尻を仄かに染めたエース…。

何度も何度も角度を変えて、深く重なったり啄ばむだけのものだったり、ただ共通なのは

酔ったせいか気怠いような…柔らかい動きについついリードされたまま何も出来なかった。

一度口腔を舐め探った舌が抜かれて俺の下唇を食むと、重なった時と同じように、ゆっくりと

唇が離れた。

 

 

「……シャン…昨日の…誰?」

 

離れた唇が紡いだ台詞に、我に返ったように目を見開いた俺に、エースは拗ねたように唇を

尖らせて俯いた。

 

「……昨日…喫茶店に一緒に居たお姉さん」

 

「…………ん、あ…ぁあ…」

 

「誰だよ、あれ…」

 

さっきより幾分イラついたような口調と眼差しに、俺は小さく笑って髪を掻き上げた。

もちろん。

疾しい事なんて何もナイ。

 

「昨日な、電話があったんだよ…」

 

「あのお姉さんから?」

 

「んにゃ、白髭から。」

 

「親父ッ??!」

 

「そう。エースの近況とか…大学にちゃんと行ってるか、進路に…色々」

 

「…………」

 

「そんで白髭のメイドのお姉さんが代わりに話し聞きに来たんだよ。居んだろ?

あの…色っぽい看護服のお姉さん。お前だって知ってるはずなんだけど?」

 

「……ぁ……」

 

俺の話しを黙って聞いていたエースが、思い出したように小さく声を洩らして、

自分の早とちりに頭を掻いた。

 

「さしずめ、私服だったから解んなかったってトコか?」

 

「…………ゴメン;」

 

からかうような俺の口調に軽く赤面して、コロ、とソファに寝転んだエースに

俺も小さく笑っちまった。

 

「あ〜…まだ酔ってるみてぇ」

 

「嘘吐けよ、早とちりだったんだろ…照れんな+」

 

クック、と笑う俺に赤面したまま、下から睨むように見上げてきたエースは、ふん、と

言って続けた。

 

「やっぱ要る、毛布!持って来い!」

 

「ははは、何だお前、可愛いな!」

 

照れ隠しな台詞に更に笑って、睨み上げてくるエースに覆い被さるようにして抱き締めた。

 

「…ッ何だよ、重いって…」

 

「駄目だ.気が変わった、つかお前酔ったのも醒めたみてぇだから寝かさねぇ」

 

「……ッな…」

 

「今日はバレンタインだろ?…折角…一緒に居るんだ」

 

ぎゅぅ、と抱き締めて、そのまま額に唇を当てて囁いてやれば。

小さく跳ねて、そろそろと背中に腕を絡めてくるコイツが可愛い…。

 

「……昨日まで…先に寝たクセに…」

 

「だって一緒に起きてたら我慢出来ねぇだろ?」

 

「……朝もずっと寝て…見送ってくれねぇし…」

 

「だってお前、朝シャワーだったじゃねぇか…夜の我慢が無駄になるだろ?」

 

「……」

 

「他には…………?…エース…」

 

こめかみや耳朶に口付けながら、説き損ねないように誤解の先を促した。

口付けた耳朶をそのまま甘噛みして、中に舌を挿し込むと小さく震えた体に、

もうそれ以上、言葉は要らねぇと思った俺は、抱き締める腕を緩めて、

今度は自分から口付けた。

 

吐息も奪うような…深い口付けで、お前の小せぇ不安なんか、全部

忘れさせちまいてぇ…なんて。

 

 

 

 

 

お前に言ったら、ガキだって言われんだろうな…

 

 

 

 

*****NEXT*****

 

風邪のためアップが大幅に遅れたシャンAバレンタインネタSs;

ここで終わってもいいんですが三宮はまだこれにエロをいれたいらしい(笑)

って事で続きます。近いうちに…ッ!!

次ぎは『夜の営み』編です(爆)

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