前夜祭

何やら、今日はサンジがやたらと嬉しそうだ。

普段無頓着な俺から見ても明らかだから、

その浮かれようは相当だろう。忙しなくダイニングを行き来し、

毎晩恒例の晩酌に顔を見せた俺にツマミも出さずに、

キッチン中を甘ったるい匂いで埋めつくしていた。

「何作ってんだよ」

ツマミもない上に、このままだと存在すら忘れられそうだった俺は、

まだ忙しく動く背中に声をかけてみた。

その問いかけに半分だけ振り返り、呆れたように見えている片方の眉を顰めた。

「…これがテメエのツマミに見えんのか?」

「…見えねえから聞いてんだ」

尚も手を休めずに続ける。

「明日、バレンタインだからな。チョコ作ってんだ」

―――何でも。一昨日まで停泊していた町で、上等のチョコレートを見つけたらしく、

嬉しそうに、これまた日保ちしないからと、いつもはお目にかかれない

生クリームを手元のボールに注いだ。

――ま、テメエにゃ甘いモンなんて、喜ばれねぇがな。――

と、付け足しながら・・・・・・・。

「――――んなことねぇよ……」

ツマミのない酒が進まず―もちろん其れだけが理由ではなかったが――

俺は腰を上げ、サンジの肩口から手元を覗き込んだ。

「なぁ、コレ。なんだ?」

サンジの右側のボールに、体温計のような棒が突っ込まれているのに気付き、

指差した。

「あ?あぁ、ソレ。温度計だよ、お菓子ようのな」

「何で、んなモンが必要なんだ?」

珍しく俺が料理に関する質問なんかしたもんだから、

サンジは驚いたように目を見開いたがすぐに嬉しそうに頬を上げた。

――うぁ……テメぇ、可愛過ぎ……―――

俺の一途な胸の高まりも知らず、サンジは弾むような口調のまま続ける。

「テンパリングっつってな。チョコの種類によって溶かした時、

一番艶が出て美味そうになる温度が違うんだよ。計って作ると

出来たときの舌触りがまるで別モンだぜ?バラテイエに居た頃は

こんなん無くたって良かったんだがグランドラインの気候ってのぁ気まぐれだからな」

そう言って、艶っぽく方眉を上げて見せた。

今溶かしてるヤツは、だいたい人肌程度がいいらしく、計針を覗きこんで頷いた。

「ゾロ、味見してみっか?」

溶かしたチョコを自分の指に絡めて、俺の目の前に差し出す。

甘いもんは苦手だが、俺は躊躇わずにチョコに覆われた白い指先に舌を合わせた。

「ど?」

ちゃんと人肌?と、

首を傾げたサンジのサラサラした蜂蜜色の髪が、

俺の肩を掠めて…………。、

「―――――ッうわ!!」

悪いとは思いつつも……、その笑顔と、煌びやかな金髪と、チョコのせいだけではない

甘い指先のせいで。不覚にもこの天然誘い受けコックに発情しちまって。

料理のために捲り上げていたシャツの袖から覗く細い腕を引き寄せて、

腕の中に閉じ込めた。

「ゾ、ゾロ?」

「悪ぃ……。ヤりてぇ」

「ッ!!!!!ッに言ってやがる!この変態マリモ!放せよ、俺は今料・・・んぅ」

のさばらせておくと、煩い唇に軽く吸いついてやれば驚いて静かになった。

抵抗しないサンジを調子に乗って床に押し倒すと、不満そうなサンジと目が合った。

「………不満そうだな」

「ッたりめぇだろ!?料理中だっつーんだよ!」

「俺に意見を求めたテメェが悪ぃ」

「はぁ?」

「”人肌”なんて俺は比べねェと解んねェし、好きなやつに、んなこと訊かれて

勃たねェほど枯れちゃいねェ」

「んなつもりで訊いたんじゃねェよ!///変態剣士!」

「ウルセェな。気持ちヨクしてやっから、大人しくしとけvv」

「ケダモノ〜〜〜〜〜ッ!!!」

*************************

*************************

*************************

NEXT→

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送