〜聖なる夜に降る雪は〜

 

 

「あっ!!エース!!雪が降ってきたぞ!!」

 

 

それは嬉しそうにはしゃぐ弟の声だった。

見世から繋がった住居にある其処で、紅い格子の隙間から見上げた

 

 

真っ白な 雪

 

 

急かす弟の腕にまるで引き摺られるように、

吸い込まれそうな程に降りしきるその舞雪に思わず目を奪われたように俺は

薄灰色の闇から生れ落ちるその白くて冷たい塊に魅入った

 

 

「エース〜雪だるま作ろうぜ〜!!」

 

「‥ルフィ、まだこれじゃ全然雪が足りない」

 

地面の片隅に落ちては消えるを繰り返すその結晶を恨めしそうに見つめる

まらなそうな顔をする、その可愛い弟の頭をくしゃっと撫でたルフィの傍にしゃがみつ

 

 

「ちぇー‥」

 

 

「明日の朝になれば少しは積もるんじゃないか?そしたら一緒に作ろう」

 

 

「ホントかっ?エース?!」

 

「兄ちゃんが約束破ったこと今まであったか?」

 

「にししっ!!無いっ!!」

 

 

「だろ?」

 

 

パッと明るくなった表情を浮かべてルフィがまた小さな庭を走り出した

 

 

「ねぇー!!ルフィ!!」

 

ハラハラと舞い落ちる雪を捕まえようとしていると不意に後ろから可愛い声が掛けられて

縁の方を向くと、暇の時なのか禿のナミが薄橙色の着物を着てルフィを呼んでいて

オレと目が合うと、ニコッと微笑まれ、つられて笑い返すと嬉しそうに彼女もまた破顔した

そうして、そのまま二人はバタバタと廊下を駆け出して行った。

 

 

大方、子が多く居る部屋へ遊びに行くのだろう

年が近い二人は仲が良く、その姿はいつ見てもオレにとっては微笑ましいもので

奔放なルフィを嬉しく思いながらも、無邪気になれない自分にほんの少し胸が痛んだ

 

 

 

「冷た‥」

 

 

ルフィにに急いで引っ張って来られたせいで、

薄着物一枚に上衣を羽織っただけだったことにさえ気付いて思わず体の芯が震えた

 

 

あぁ、此処に初めて連れて来られたのは確か、こんな雪の日だっただろうか。

それでも、とめどなく振り続ける空を見上げることが止められずに

 

 

肌に触れ

 

髪に触れ

 

着物に触れ

 

 

溶けていく雪がどんどんと冷水と変わり染み込んでいくのを許していると‥

 

「なーにやってんだエース?風邪引くぞ?」

 

 

「†っ‥‥シャン‥‥」

 

 

聞き慣れ過ぎたくらいに聞き慣れた男の声が不意に背後に迫った

それと同時に後ろ手のまま体を引かれ、次の瞬間には後ろに見上げた向こうには、

白い雪に浮き栄えするような一筋の真っ赤な髪

 

 

「どうした?すっかり冷えちまって‥ったく、すぐ湯浴みをした方がいい」

 

「‥寒い」

 

「そりゃ、こんだけ冷えちまえばなぁ‥」

 

 

「寒い‥」

 

「エース‥?」

 

 

その顔を見ると、今まで神経が壊死していたのかもなんて思う程に急速に体は冷え

心配そうな声色で、優しい養い親に黒い羽織で体を包み込まれると

厚みのある布と男の体温に抱き締められて冷え切った体に急速に熱が戻り始めた

 

 

「嫌いだ‥雪なんて」

 

すっかり血の気の引いて白くなってしまった掌を眺めたままポツリと呟く

シャンは何も言わない。

沈黙は嬉しかった。慰めよりも体温が暖かかった

俺たち兄弟の境遇を知っているのは只彼一人。

黙ったままで、でも少し困ったような顔をして俺の頬を包んで

 

 

「なぁエース‥今日はな、異国では聖なる日なんだぜ?」

 

「聖なる‥?」

 

「あぁ」

 

 

「意味分かんねぇよ‥?」

 

 

「ま、お前も大人になれば分かるさ」

 

「大人に?って‥ますます分かんねぇしι」

 

 

「本当に傍に居て欲しい人が出来た時に、そいつに教えてもらえ‥

そーすりゃお前はきっと冬も、雪も‥きっと好きになれるだろうさ」

 

 

「‥?でも俺はシャンが居てくれればいーんだ‥」

 

 

「ん?ははっ‥そりゃ嬉しいな、いつまでだろーなぁ、エースがこんな事言ってくれんのは」

 

 

「なんだよそれって?」

 

「あぁ、いやいや‥こっちの話」

 

 

ケラケラと楽しそうに笑いながら、悟ったような言葉を上げるシャンクスの、

その科白の意味が分からなくてムッとした声を出すと

朗らかな笑顔を向けられて、暖かい、大きな掌が頭に乗せられた

 

 

「まーた、自分だけ分かってるって顔しやがって‥」

 

「まぁまぁ、エースも大きくなれば分かるさ‥‥それまではオレの傍に居ろ」

 

「言われなくてもそのつもりだってば!!」

 

「あぁ、でもまだ抱っこが必要なガキじゃねぇーか‥」

 

 

「だって足冷てぇし‥」

「分かった分かった」

 

教えるつもりは無いらしい頭の上の掌の主に手を伸ばして抱き上げて貰うと

その人の肩越しにまた空を見上げた

 

 

‥聖なる。なんて言われても、異国なんて響きさえ実感は沸かず

そんな意味すら子供だった俺には理解出来なかった

ただただ、この長い冬が早く過ぎ去るのをじっと目を閉じて待っていた

安らげるのは養い親と弟の存在のみ

今、自分を包んでくれる暖かな温もり

失いたくなかったのはただそれだけ――‥

 

 

無限のように降る雪は

夢幻のように美しく

 

 

はらはらはらと舞う雪は

いつか彼の哀しみを埋め尽くして

 

 

真っ白になった心を

きっと新しく染め上げる人が

現れるであろうと―‥

聖なる夜に降る雪よ

 

降り積もれ

舞い落ちれ

 

 

脈々と続く白はいつか

きっと彼の心を癒す雪

 

 

-了-

 

 

 

★☆★

『火拳中毒』の管理人・朋さんに頂いた素敵なクリスマスSS!!この話しの元になっているのは朋さんのサイトで連載(?)中の

「桃源郷」というパラレルSSなんですが、モクメラなんですよー…本来は(何)陰間エースとスモーカーさんの話しなんですが、

シャンクスは亭主なんですよ、その店の。20歳で店に出てスモ様に会うんですが、この話しは番外編って事でエース12歳、ルフィ9歳くらい

だそうです。番外編って事はですね、三宮のためだけに書いて下さったんですよ〜///朋さんがッ!!!しかもシャンエーチックで、ルナミチックな

三宮の好物仕様になってるんです♪(興奮)凄い嬉しいです(><)本当に有難う御座いました!!本編の続きも楽しみにしてます!!

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