シャボン玉

多量の雨に見回れていた海域を越えて

久々の快晴に、俺は朝食の洗い物を

終えると皆の居る甲板へと歩を進めた。

眩しい太陽に目を細めて、見渡すと穏やかな

日常が広がっていた。

ロビンちゃんはデッキチェアとパラソルを出して

いつものように小難しい本に目を落としていて。

その椅子に凭れて転寝してるのはルフィ。その肩に

寄りかかってナミさんまで眠ってる。

ルフィにやってたのか、膝には剥きかけの蜜柑を乗せて。

見張り台から垂れたロープに洗濯物を干してんのは

ウソップ。雨続きだったからな…凄ぇ量だ…。

ふと、ウソップの野郎が俺を見て声を掛けてきた。

「お〜い!サンジ!チョッパーいねぇか?」

「あ?チョッパー?」

「洗剤きれちまってよ〜、まだ洗濯モン残ってんだよ、

作ってくれるっつってたんだ!」

俺はキッチンの角にちんまりと作られたウソップの実験室

(つっても酒樽の机だけだけどな)を覗いた。

「チョッパー?ウソップが洗剤きれちまったって、呼んでるぜ?」

「あ!忘れてた!出来てるからすぐ持ってくよ!」

チョッパーは何か新しく作ってたのか、小さな試験管から何かを

瓶に注いだ。

「そうだ!サンジ、コレあげるv昨日はホットミルクありがとな!」

「・・・え、ちょ」

そう言うとチョッパーは洗剤を抱えて甲板に出て行った。

「…なんだ、コレ…?」

それは俺が以前チョッパーにやった古い香水の瓶で。

中には透明な液体が半分入っていた。

蓋を開けて匂いを嗅いでみた。

「・・・なるほどね」

俺はその中身に苦笑し、キッチンの棚に向かった。

*****

しばらくすると、そう言えば先刻から姿の見えなかった

ゾロが男部屋のハッチから出てきた。

久し振りの日光に、眩しそうに顔を顰めながら、

さっき俺がしたように回りを見回している。

そして蜜柑畑の俺と目が合うと、驚いたように

翡翠色の瞳を見開いて寄ってきた。

「…珍しいモン咥えてんな、ニコチン依存コックが」

そう言って俺の口元にあるストローを突付いた。

「チョッパーに貰ったんだ。お前もやる?」

俺は小瓶を渡すと、咥えたストローを上下に揺らして首を傾けた。

そして最後にふっ、と息を吹いてストローの先から沢山の小さな液胞を

吐き出した。

「シャボン玉か、懐かしいな」

ゾロは嬉しそうに俺からストローと瓶を受け取ると、

形のイイ唇に咥えてゆっくりと息を吹いた。

ゆっくりゆっくり、日光を浴びた七色の水膜が大きくなって先から離れる。

俺が作ったのより、幾分大きなソレを見上げた。

「へぇ、上手いじゃん。ゾロ」

手持ち無沙汰で、いつもの煙草を胸ポケットから取り出して

火をつけた。

立ち上る紫煙と、ゾロのシャボン玉が静かに交差する。

「ガキん時はさ、コレ作れなかったんだ」

「…デッカいヤツ?」

「・・・おう」

ゾロはまた液にストローを浸けると、同じようにゆっくりとシャボン玉を

飛ばしていく。日の光が反射して、キラキラする。

「デカくしたくて力んじまってよ、すぐ壊れちまいやんの」

「やるやる!ガキん時はがむしゃらに吹きゃ膨らむと思っちまってな!」

「そんでムキんなってさ、液なくなるまで吹きまくったぜ…」

馬鹿みたいにはしゃいで二人で交互にシャボンを飛ばす。

俺が吹いてるときはゾロが煙草を吸ってた。

視界一杯がシャボン玉だ。デカいのも小さいのもあって、

ガキの頃の話ししながら、液はすっかり空っぽになった。

「…剣も同じだよな」

「・・・あ?」

短くなった煙草を海に投げ捨てて、手すりに背を向けていた俺に、

手すりに寄りかかったゾロは呟いた。よく聞こえなくて訊き返したら

下向いて首を横に振っただけだった。

「…何でもねぇ。つうか何でチョッパー、お前にこんなモンくれたんだ?」

「ん〜?昨日の。ホットミルクのお礼だって」

律儀だなぁ?なんて俺が覗きこめば、不機嫌そうにゾロは唇を尖らせた。

「悪かったな、俺は気が利かなくてよ」

「ぎゃはは、んなタマかよ!テメぇが!」

俺は新しい煙草に火をつけて、ゾロに差し出す。

黙ったままゾロは俺が持ったままの煙草を咥えて浅く吸い込んだ。

フィルターから離れた唇は、シャボン玉を作るときみたくゆっくり

紫煙を吐き出していく。

「…初めてだな、テメぇが煙草吸ってるの見んの」

「…誰が好んで吸うか、アホコック」

「じゃあ何で今日。吸ったの?」

ゾロは少し考えるように上に視線を走らせ、分かんねぇ。と呟いた。

俺は煙草を一口吸って、煙を吐きながら小さく・小さく

ゾロの名前を呼んだ。

それにつられるように顔を向けたゾロの唇にキスをした。

「!!テメ…」

唇が離れた途端に、真っ赤な顔で文句を言いそうなゾロの口に

煙草を押し込んで、俺は蜜柑畑から飛び降りた。

「今の!ミルクのお礼に貰っとくから。」

「///ふざけんな!」

「悪ぃな、これから昼飯の用意だ」

そう言って、逃げるようにラウンジに向かった。

触れただけの唇からは、俺の煙草と同じ味がした。

洗濯が終わったのか、見張り台には寄り添って眠るウソップとチョッパー

が見えた。ロビンちゃんも帽子を被ったまま寝息を立てている。

俺はさっきのゾロとの会話を思い出しながらキッチンのドアを開けた。

「……恋も同じ…だろ?」

そう呟いて、もう一度だけ。

自分の唇に手を当てた。

昼になったら賑やかになるキッチン。

蜜柑畑に残されたゾロがココ来るのも、あと少し・・・。

                            ***end***

 

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サンゾロSS第弐弾!サンジ君、ロロの唇強奪成功!!次の次ぎくらいには

告白編とか書けたらいいなv良かったら感想下さいませ♪

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