「世界に一つだけの花」

「ルフィ?もう少しで次の島よ。」
いつもの如くナミの声が弾んで聞こえた。
「おう、分かった。」
そう答えるとオレは殊更前方を凝視した。

新しい島。
新しい冒険。
そう考えると胸がワクワクしてくる。
これから待ち受けているのはどんな冒険だろうと、どんな美味い食い物があるのだろうと、考えるだけで心も体も高揚していくのが分かる。
今まではそうだった。
そう、今までは・・・。



「ナミさ〜んvv 美味しいパイが焼き上がりましたよ〜vvv」
サンジの飯は好きだけど、サンジがナミを呼ぶ声は好きになれない。
なんて言ったら良いのか分からないけど・・・。
そう、強いて言うならば胸の奥がチリチリと灼けていくような感じ。
苦い思いが胸の中に広がって、自分が自分で無くなっていくような感じ。
それを世間ではなんて言うのか知ってるけど、認めたくない。
だって、オレにはそんな感情、似合わないだろう?

自分の野望の大きさを知っているから、そんな感情を誰にも悟られずに過ごしていこうと思っていた。
勿論、当人には絶対に知られないようにと。
なのに。
胸が痛い。
告げられない想いが胸に詰まってただ苦しくなっていく。
このままでは夢すら遂げられないかも知れない。
そんな焦燥が徐々に大きくなって、オレ自身ですらコントロール出来なくなってしまっていた。
そしてオレはそれに気付いていなかった。





着いた島はあまり大きくない島で、大きさの割りには活気に溢れた街に見えた。
今までのオレは着いた途端に後ろをも見ずに駈けだしていた。
しかし、今回は出掛ける気にもなれなかった。
いつもと違うオレにみんなは怪訝そうな顔を見せた。
特にナミはマジマジとオレの顔を覗き込んでこう言った。
「今回は、何処にも行かないの?ルフィ。」
「あぁ・・・。」
言葉に詰まったオレはただそう答えると、一瞬ナミが困った顔を見せた。
「此処に、居ちゃ・・・いけないのか?」
「ううん、そうじゃ無いんだけどね・・・。」
明らかにバツの悪そうな態度でそう言ったナミの態度に納得出来ないモノを感じた。

「オレが居ちゃ、何か都合が悪いのか?」
「そ、そんな事無いわよ、ルフィ。」
明らかに視線が彷徨って、サンジに助けを求めるナミに理性が切れた。
「分かった、もういい。」
そのまま船を降りた。
心に巣くったどす黒い感情はもう消せやしない。
ナミが・・・オレの好きなナミが、オレに居て欲しくないと言うのならもうこの船を降りても・・・構わないと思った。

「待って、ルフィ!お願い・・・待って」
後ろでナミが叫ぶ声が聞こえる。
しかしオレは立ち止まる事が出来なかった。
もう・・・いい。
何もかもを捨ててしまってもいいと思える程大切なモノをオレは失ってしまったのだから・・・。










街に寄る気にもなれず、島の森を目指して歩いた。
鬱蒼と茂った森に何があるのか知る由もなかったけど、船に戻りたくないオレには一番最良の場所に思えた。
一歩足を踏み入れただけでソコが危険な場所だと分かる。
しかし、それで命を落とすのなら、オレはソコまでの人間だと言う事であろう。
そう思いながら奥へ奥へと足を進めていく。
出会う獣は全て凶暴で、得体の知れない草花がオレに纏わり付く。
それを拳だけで撃退すると更に奥へと向かって歩いていった。



突然視界が開けて大きな湖が現れた。
湖畔には今まで見た事も無いような花が咲いていた。
そのまま花の真ん中で大の字に寝転がった。
途中で暴れたおかげで気分もかなりスッキリしていた。
ふと、ナミの困った表情が浮かんだ。
今にも泣き出しそうな声が思い出された。
『待って、ルフィ!お願い・・・待って』
今まで聞いた中で一番悲しそうな声だった。

起き上がって、目に写ったオレンジ色の花がナミの顔とダブって見えた。
「泣かせ・・・ちまったよな・・・。」
胸を切り裂く程に感じられる強い後悔の念。
「バカだな、オレ。」
ナミが・・・好きなんだよな。
認めてしまえば簡単な事。
そして好きな人には幸せになって欲しい。
目の前で大好きな人が他の男に甘える姿を見るのは多分辛いかも知れないけど・・・。
「でもオレは、ナミが航海士じゃなきゃ嫌なんだ。」





両手に抱えきれない程の花を抱え、そのまま船に向かって後をも見ずに駈け戻った。
途中、何匹かの獣をはね飛ばした気もするが、何も問題は無かった。
港の入り口に立って息を整えた。
意を決して歩き出せば、見慣れた船首の船の前に、見慣れたシルエットが見えた。
「遅ぇぞ、クソ船長。折角の飯が冷めちまうだろうが・・・。」
「・・・・・」
何も言う気になれずにそのまま横を通り過ぎようとした。
「・・・ナミさんを泣かせるんじゃねえぞ・・・・・・・・おい、ルフィ?」
掴まれた肩を乱暴に振り解くと、そのままサンジを睨んだ。
「そっくりそのままお前に返す。」
一言だけ言い残すとオレは船に戻った。

階段に所在なく座り込んでいたナミを見つけると手に持っていた花を押しつけた。
「ナミ、悪かった。」
そう一言だけ言い残して男部屋に戻ろうと歩きかけた。
「ルフィ!」
ナミの涙混じりの声がオレの歩みを止めた。
ただ立ち尽くす事しか出来ないオレの背中にナミがコツンと額を寄せた。
「私こそ、ゴメンなさい・・・。ルフィをビックリさせたくて・・・内緒でパーティを開こうと思ったの。」
「・・・パーティ?」
「そう、ルフィの・・・バースディ・パーティ・・・。」
「オレの?」
「そして・・・気持ちを打ち明けたくって・・・どうしたらいいかってサンジ君に相談に乗って貰ってた・・・。」
「・・・・・」
「ナミさんが・・・ルフィ、お前からは絶対に言い出さないだろうからって・・・でもお前の夢が叶うまで待っていられないって・・・だから自分から言いたいって・・・そう仰るから、オレは協力しただけだ。」
「・・・ナミが?何を?」
「ルフィが、『好きだ』って。」



多分、一分以上は呆けていたに違いない。
しかしナミもサンジも何も言わずただオレを見つめていた。
「・・・ナミが・・・オレを・・・好き?」
なんとも間の抜けた返事だと自分でも思う。
でもナミもサンジも笑うことなくオレを見つめ続けていた。
「だから、サンジ君にケーキの作り方を習っていたの。ルフィのバースディケーキを焼くために・・・。」
「分かったか?クソゴム野郎。ナミさんの気持ち、ありがたく頂戴しろ。」





飲んで騒いで歌って踊って、いつもの如くのオレ達の宴会は夜遅くまで続いていた。
ただ一ついつもと違っていたのは、オレの隣には必ずナミが居た事。
多大なる嫉妬と勘違いを経験した今年のオレの誕生日は、世界で一番大切なモノを手に入れた日でもある。
オレの一番大切なモノ。
ナミ−『世界に一つだけの花』

                fin

 

   ルナミ聖誕祭主催の、香月様宅から強奪して来た、ル誕SSです〜〜v

               何てったって見所は「サンジ君に

ヤキモチを妬いてナミさんにイライラをぶつけちゃう葛藤船長」でしょう!!(何だそりゃ)

     上手く言えませんが人を好きになると一度は感じちゃうモヤモヤですよねv

                しかもルフィが大人チックで…v

         香月様vv素敵なSSありがとう御座いました〜〜♪

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