「食い逃げだ〜ッ!!」

 

停泊していた島の外れで、この声を聞いたのはほんの

数分前の話しで…。

今俺はその食い逃げ犯と一緒に、泊まっていた宿に居る。

どうやら食い逃げ逃走中にベンちゃんに拾われたらしいが…

目の前に居る食い逃げ犯は、とても不機嫌そうな面で俺の向かいの

ベッドに胡座をかいでいる。

 

再会

 

「何でお前が不機嫌なんだよ…助けてやったんだぞ〜?」

「……」

相変わらず不機嫌な眼差しで見上げてくるのは、懐かしい顔。

10年前に停泊した村で、仲良くなった威勢のいいガキの、しっかり者の

お兄ちゃん…

 

「どした?まだベンちゃんに怒られたの気にしてんのか?」

俺は先刻ベンに掴まって、説教を受けていたエースを思い出してクック、と笑った。

その様子に、また唇を尖らせるコイツが可愛い。

「お前って昔っからベンに怒られると大人しかったよな〜…俺が言っても聞かねぇクセに」

「だって、ベックはあんたと違って大人だもん…」

「俺のがお頭なんだぜ〜?」

コイツらしい台詞にケラケラ笑って、俺は頬杖をついてエースを見詰めた。

頬に、いつ付けたか知らねぇが、小さな擦り傷があって、俺はベッドサイドの棚から

クスリの入った箱を引っ張り出して、エースに絆創膏を投げてやった。

気付いていないのか、絆創膏を受けとっても首を傾げるエースに小さく笑って、

ベッドから腰を上げると向かいのベッドに腰掛けた。

「ここ…擦り剥けてんぞ?」

エースの頬を突っついて、に、と笑うと思い出したように小さく、あ、と呟いた。

「ん?どした?」

「や、この島に来るまでに海賊船とすれ違ったんだ。そん時ついたかも・・・銃声がして、掠ったんだ」

そう言って、絆創膏を剥すエースの肩に手を添えて、頬の傷に舌を這わせた。

「ッ!ちょ…シャン…?」

「ん〜?」

慌てたエースに構わずに、ピチャ、とわざとらしく音を立てて傷を舐めながら、答えた。

「何やってんだよ…」

「消毒…」

軽く身を捻って抵抗するエースを更に抑え込んで

ベッドヘッドまで追い込むと、傷口にちゅっ、と吸い付いた。

「……ッ///」

緊張してんのか、小さく強張った体に喉奥で笑って、

俺は唇を離すと大人しくしているエースの手から絆創膏

を取り上げて、エースの頬にペタ、と貼り付けた。

「あい、おしまい」

「……サンキュ」

頬を撫でながら、笑いかけて来るエースに小さく笑みを返して

やべぇなぁ…と呟いた。

「んあ?どした?」

無防備に開かれた足の間に殻だを割り込ませ、怪我した方と逆の頬に軽く口付けた。

柔らかく、頬を撫でるように唇でなぞってから、唇の形だけで名前を呼んでやると

微かにピク、と跳ねる体が可愛くて、そのままギュ、と抱き締めた。

「かぁわいいな…エースは」

喉の奥で小さく笑って背中を撫でると、不機嫌そうに俺を見上げてくる目と、目が合った。

「…シャン……」

「んん?」

「……何のつもりで…抱き締めてんの?」

軽く胸を押され、とりあえず抱き締めていた腕を緩めて、俺はエースに首を傾げた。

「ヤだったか?」

「ヤ…そう言うんじゃなくて…何で?」

昔から、ルフィと違って無駄な事はしない容量のイイ奴で。

ルフィと馬鹿やった時も、コイツはノッてこなかった。

「理由がねぇとハグっちゃ駄目か?」

「……理由、ねぇんだな?」

呆れたようにため息をつくエースに、へらっと笑って俺はもう一度強く抱き締めた。

「そうだな……お前が可愛いからだなv」

頭をポンポンと軽く叩いてから囁くと、ぐに、っと頬を抓られた。

「ひでで…」

「あんた…ちっとも変ってねぇなぁ…」

小さく呟いて、する、と俺の腕から抜け出して、エースはニカっと笑った。

「おい、エース…」

「ベックに宜しくな!俺、もう行かなきゃだからさ」

そう言って、部屋の窓枠にひらりと上がって荷物を抱えなおした。

「一晩くらいいいだろ?泊まってけって」

立ちあがって、その以外と日焼けしてねぇ腕を掴んで引き止めた。

見上げた唇は微かに笑っていて。

「……」

「……ん…」

そのまま、ゆっくりと髪を掴まれて唇をふさがれた。

「……っは」

重なった時と同じように、ゆっくり離れた唇から小さく息が洩れたのを見届けて

、俺は閉じていた目を開けた。

「何だ?……今の」

コイツには珍しい、挑発するような瞳に掴んだ腕を緩めて問い掛けた。

「……ヤだったか?」

「……はは」

俺の台詞を真似た言い回しに笑って、エースの頭を柔らかく撫でた。

「……いや?大歓迎…」

そう言ってやると、嬉しそうに笑って、エースは俺を見詰めてきた。

「逢えて良かった…」

「ん、俺も」

二人で笑って、もう一度軽く口付けた。

「また逢えるかな…」

「逢えるだろ?グランドラインっちゃそう言う海だからな」

 

 

 

 

 

エースの背中が見えなくなるまで見送って、その視線の先に広がった蒼い固まり。

光りが反射してキラキラ光る水面に目を細めて、煙草に火をつけた。

 

「…エース、飯…って、エースは?」

扉が開いて、飯の乗った皿を抱えたベンちゃんが、俺の背中に声を掛けた。

「行ったぜ?急ぎの用があるみてぇ」

「……そうか…んじゃ、あんたが食うか?コレ」

手に持った皿を軽く持ち上げて尋ねたベンちゃんに振りかえって、俺は窓を閉めた。

「なぁなぁ、ベンちゃん!次はいつ逢えっかなぁ?」

「何だ、シャンクス…名残惜しかったのか?帰すのが」

苦笑するベンちゃんに、まぁな〜、と呟いて…。

シーツの乱れたベッドに腰掛けた。

「明日、出航すっか!」

「珍しいな…あんたから言い出すのは」

皿に乗ったトーストに齧り付きながら笑うベンちゃんに笑みを返して。

「腹減ったな〜…ベンちゃん、俺にも!」

また逢えたら、今度は何て言って抱き締めてやるか考えながら、煙草をもみ消した。

 

 

きっとまた逢える…

 

 

 

 

 

 

 

 

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