「明けましておめでとう御座いま〜す♪」

 

綺麗に重箱に詰められた御節で、

すっかりテーブルセッティングの完了したリビングに、

元気な声を掛けながらエースは炬燵で暖を取っているシャンクスに笑みを向けた。

 

「おめでと、ホラ寒ぃんだから早くコッチ来いよ…」

 

食べ掛けの蜜柑を脇に避けて、シャンクスはエースに手招きをした。

黒い着物を適当に羽織って、呼ばれるままに炬燵に潜ると、

エースは手元にある屠蘇の入った

徳利を持ってシャンクスに向け。

 

「まぁお屠蘇でも♪」

 

「んん、ありがと」

 

差し出された徳利に、自分の猪口を持ち上げて傾ける。

今日は1月1日。

元旦。

 

 

 

姫始め

 

 

 

「なぁなぁ、今日どうする?」

 

栗金団にパクつきながら、

エースは目の前で数の子を咥えたシャンクスに問い掛けた。

 

「ん?」

 

「今日。一日市でも行くか?」

 

どのチャンネルでもやっている正月の特番をリモコンでパシパシと換えながら、

エースはもう一度シャンクスを見た。

濃紺の着物を崩して相変わらず屠蘇を啜りながら、

シャンクスはエースの視線に へら、と笑った。

 

「パスだな。元旦はゆっくりしてぇ」

 

昆布巻きを箸で挿して持ち上げ、顔の横で軽く振って見せ、

シャンクスは目を細めたままエースを見詰めた。

 

「お前さ、親父さんから帰って来いって言われてたんじゃねぇの?」

 

先週、シャンクスの所に、白髭から電話が入っていた。

 

「年末くらい帰って来いってさ。俺まで雷喰らったんだぜ」

 

シャンクスの台詞に、エースはリモコンを放ると涼しい顔のまま首を横に振った。

 

「やぁだよ、面倒だもん。親父ん所にはルフィが帰るから俺はイイんだ」

 

適当にあしらって、エースは重箱に手を伸ばした。

 

「ふーん…別にイイんだけど…お前居てくれたら俺も楽しいし」

 

「だろ?だからイイんだよ、俺もココが好きだから♪」

 

二人は簡単に納得すると、新しく猪口に屠蘇を注いで飲み交わした。

シャンクスの家にエースが転り込んだのは去年の4月。

地元から離れた大学を志望し、

見事合格したため近くに一人暮ししているシャンクスの家に居候を決め込んだ。

エースのためにマンションを借りてやると白髭が言ったのも聞かず、

エースはシャンクスの家がイイと我侭を通した。

それから9ヶ月。

居候と言うより同棲に近い生活を送りながら、エースは正月すら実家に帰らない。

白髭の苦労は年が明けても続きそうだ。

 

 

 

そんな白髭の気持ちを微塵も考えず、

止める事なく箸と口を動かしていたシャンクスは、

エースが重箱から伊達巻を取り出した時に皿から顔を上げた。

 

「コレ食ったらさ、ちょっとやりてぇ事があんだわ…俺♪」

 

「やりてぇ事?」

 

伊達巻を半分に割りながら、エースはシャンクスに首を傾げた。

黒の羽織を羽織った白を基調にした赤い模様の着物の襟首を軽く緩めながら、

二つに割った伊達巻を口に運び

もぐもぐと口を動かしているシャンクスを見詰めた。

 

「そう♪すっげイイ事vだから今日はウチでのんびりだ」

 

もう一度ニッコリ笑って、シャンクスは残った昆布巻きも飲み込んだ。

特に用もねぇしな、と呟いて、エースも伊達巻を平らげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やりてぇ事ってコレかよ…」

 

簡単に重箱を片付けて、のんびり炬燵でテレビを見ていたエースに、

シャンクスはニッコリを柔らかい笑みを向けた。

 

「エース、ちょっと♪」

 

「ん?あぁ…何かしたいんだったな」

 

シャンクスにつられたように笑みを返すと、エースは炬燵から立ち上がった。

 

 

 

シャンクスに付いて行った先は寝室。

4畳半の部屋の隅にベッドだけ置いてある無機質な部屋で、

シャンクスは嬉しそうに笑っている。

 

「……何すんの?ココで…」

 

「もちろんナニを♪」

 

言うとエースの首に手を回して引き寄せ、耳元に囁き。

 

「……正月早々…」

 

「あらヤダ…姫始めってんだよ、知んねぇ?」

 

そのまま軽く耳朶に歯を立て、首に回した手でエースの顎を撫で。

 

「んぅ…、ちょ…待って……」

 

そのまま始めそうなシャンクスの胸を押して体を離し

 

「解ったから…折角ベッドがあんだし…ベッドでやろうぜ?」

 

名残惜しそうなシャンクスに告げると、ベッドサイドまで歩いて行き、

羽織っていた黒い羽織を脱いでシャンクスを振り返った。

 

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