一度歯車が噛み合うと。

次に合うのも簡単で…。

暗がりの路地を歩いていた先に浮かび上がった

赤と黒のシルエットは…誰だか推測するには安易過ぎる人だった。

 

 

 

 

「どうしたんだ?一人でこんな時間に」

 

取り合えず入った安い酒場で、これまた安いラムを煽りながら、

俺はシャンクスに尋ねた。

黒いマントを羽織ったまま、シャンクスはラムの入ったグラスを傾けて、

中の氷をぶつけてカラカラと鳴る音に涼しげに耳を傾けている。

 

「いいだろ?偶には一人で呑みたい時が俺にも在ったって…」

 

ケラケラ笑いながら2杯目を呑み干すシャンクスに、俺は呆れたような笑みを見せた。

だったら俺なんか誘わなくていいのに…。

 

「…もう食い逃げはやってねぇだろうな?」

 

テーブルに頬杖をついてニヤニヤと悪戯な笑みを浮かべたまま

俺を覗き込んで来るシャンクスに「どうかな」と曖昧に答えて、

俺も2杯目のラムに手を伸ばす。

 

「ルフィの宝払いは見逃しても、俺のは見逃してくんねぇの?」

 

そう言ってやると

「…ははッ」

 

と笑って、空になったグラスを指で弾いて遊んだ。

そのまま、何をするでも、話すでもなく…

ただ静かに酒を煽る周りの奴らを眺めていた。

 

 

 

どれくらい呑み明かしたのか…。

酒場にはもう人は斑で、酔い潰れた奴らは迷惑そうに店主に外に放り出されていた。

俺も残ったラムを喉に流し込んで、シャンクスの方を見た。

ラム酒は2本目に入っていたが、シャンクスにしては遅いペースに首を傾げた。

たった2本のラムで、薄く目じりが赤くなっていて、俺は眉を顰めた。

 

「……ラム2本で酔うタマじゃねぇだろ?ココ以外でも呑んで来たのか?」

 

俺のその問いに、あ?、と回路の繋がってないような声を返してから、

覚えてねぇなぁ?と、また小さく笑った。

 

「おいおい、しっかりしてくれよ?オッサン」

 

そんなシャンクスに苦笑して、俺はシャンクスの分の代金も払って。

立ち上がった俺のリストバンドを、シャンクスが掴んできた。

 

「…どうした?一人で帰れんだろ?」

 

座ったままのシャンクスを、見下ろす形で声を掛け、再び隣りに腰を下ろした。

「……どこ泊まってんだ?シャン…電電虫貸せよ、ベック呼んでやっから」

 

そう言って肩を揺さ振っても、シャンクスは視点の合ってねぇ目で見上げてくるだけ…

 

「しょ〜がねぇオッサンだな、おい…」

 

仕方なくシャンクスを支えて店の親父に更に金を払った。

 

「2階って宿やってんだろ?今夜一晩、コイツ頼むよ…」

 

店の親父に鍵を貰って、湿っぽい廊下を歩いた。

横では俯いたままのシャンクス。

突き当たりの扉の鍵を開けて入った部屋はベッドと小さなテーブルだけで、俺は

シャンクスをベッドに座らせて水を渡した。

 

「サンキュ…」

「礼を言うなら素面んなってくれよ…」

 

苦笑して、湿った部屋のカーテンを開いて窓を開けた。

 

「……ぁ…シャン…雨が降って来たぜ…」

 

灰色の路地を黒っぽく染めていく水滴に、開けた窓をすぐ閉めた。

店頭には雨宿りしている酔っ払いや、恋人たちの頭がチラチラと並んでいた。

 

「……お前もココで休んで行けよ」

 

すっかり静かになったんで、寝ちまったもんかと思っていたら、シャンクスは俺のすぐ

後ろまで来ていた。

 

「……雨、降ってるしな…」

 

考えるように窓の外を眺め、俺は小さく、そうすっかな…と答えた。

考えてみればこんな酔ったシャンクスをココに一人で置いておく訳にもいかなかった。

俺はシャンクスに向き合って、ニカっと笑ってみせた。

シャンクスは相変わらず目尻を赤らめていて、

普段のニヤケ面からは想像出来ねぇくらい真面目な面してやがって…。

 

「シャンクス…?」

 

黙ったままのシャンクスの顔の前で軽く右手を振ってみた。

 

「…ッ!」

 

その右手を、ガッと掴むと、シャンクスは口元に小さく笑みを結んで

ゆっくり近付いてきた。

なんとなく黙っていられなくて、俺はシャンクスが前に出る度に後ろに下がった。

背中に伝う嫌な汗が、激しくなってきた雨音に震えた。

 

「……エース…」

 

逃げる俺の手首を強く掴んで、とっさの事で引き寄せられるままの俺は

呆気なくシャンクスの胸に捕まっちまっていた。大した身長差もねぇから、

俺の顔の横にはすぐシャンクスの顔があって、

先刻まで煽っていたラムの匂いが鼻を突いた。

 

「何だ…?また、こないだの続きか?」

 

俺は平静を装って聞いたが、どう聞こえたかは解らねぇくらい動揺してて…。

鼻を掠めるラムに混じって香る、シャンクスの匂いや、いつも吸ってる煙草の匂いに

堪らずに胸を押しやってみた。

こないだは、それで開放された。

 

「シャンクス…離せよ…」

 

しかし、今回は見逃してもらえなかった。

何度押しやっても、離れるのは精々拳一個分で…。

すぐに引き寄せられてピッタリと密着させられた。

背中を伝っていた汗も、すっかり乾いていて、更に俺の心臓も煩くなってきた。

 

マズイ…。

ヤバイ…。

ニゲロ…。

 

心の中で囁かれる言葉に、僅かな疑問を残しながら、

俺は再びシャンクスを見上げた。

 

「シャンクス…疲れてんだろ?もう…――」

 

そのまま、シャンクスの胸に抱き締められたまま、静かに唇を塞がれた。

さっきよりも濃く感じるラムの匂いと、煙草の匂い。

それに重なるのは、挿し込まれた舌の感触。

 

「ッんぅ…ん…」

 

柔らかい舌が、逃げる俺の舌を追い掛けてきて、上顎や歯列を舐めなぞる。

口腔を、厭らしい音を立てながら攻められ、痺れて抵抗出来なくなった舌を、

今度はあっさりと絡め取られた。

 

「んぁ…ッん…ふ」

 

舌を甘噛みされると、力が入らなくなって、そのまま、

シャンクスの好きなように口付けは続いた。

 

 

 

 

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